「211万円の壁」という、あまり聞きなれないキーワードが話題になりつつあります。よく「106万円の壁」や「130万円の壁」などいいますが、211万円も同じで制度における分岐になるポイントです。
ちなみに211万円の壁は年金受給している人が対象となっており、211万円未満の年金収入と212万円を超える年金収入では税金や保険料負担などで大きく異なるのです。
いったいどの程度変わるのでしょうか?
住民税が非課税になる
前年の合計所得額が自治体の定める基準額以下であれば、住民税は非課税になります。
住民税の計算は所得割と均等割がありますが、均等割で非課税となれば、所得割も非課税になる計算になるので、均等割を意識して見ます。
35万円 × (本人・配偶者・扶養親族の合計数) + 32万円以下
均等割
35万円 × (本人・配偶者・扶養親族の合計数) + 21万円以下
たとえば、夫婦2人以上の世帯であれば、以下の計算式になります。
35万円 × 2(夫婦) + 21万円 = 91万円
この91万円が住民税非課税限度額となります。キーポイントになる数字でもあります。
年金受給者の控除
年金受給者は給与所得者よりも多くの控除が受けられます。
65歳以上の場合
年金収入合計 | 割合 | 控除額 |
---|---|---|
120万円以下 | 所得金額0円 | |
120万円を超え、330万円未満 | 100% | 1,200,000円 |
330万円から、410万円未満 | 75% | 375,000円 |
410万円から、770万円未満 | 85% | 785,000円 |
770万円以上 | 95% | 1,555,000円 |
年金収入が120万円以下の場合は、非課税になっています。また、年金収入が211万円の控除は以下の計算式で求められます。
年金収入額211万円の人の控除後の所得金額は91万円となりました。先ほどの、住民税均等割での計算で91万円以下の場合は住民税はかからないとなっていましたので、このケースが住民税非課税の上限となるのです。
もちろん、年金収入211万円以下の夫婦2人世帯も住民税が非課税となります。
住民税が非課税になることのメリット
住民税がまずかかりません。この住民税を払わないというのは、他にもメリットを生み出します。
- 国民健康保険料が半額以下になる
- 医療費の自己負担額が下がる
- 高額医療費の負担上限が下がる
なかなかの優遇といえるでしょう。この他にも、「交通機関の助成」「定期健康診断の割引」など自治体により、住民税非課税世帯への助成があることもあります。
これらのメリットは年金収入212万円以上の人は受けることができません。それゆえに211万円の壁と言われるわけです。
年金収入を211万円以下にする裏技
このようなメリットを知ってしまうと、年金収入211万円以下にしたくなるものでしょう。もし、まだ年金受給していないのであればチャンスはあります。
それは、年金を繰り上げ受給してしまえばいいのです。年金を繰り上げ受給すると、年金受給額が減ります。その減額割合は、1か月繰り上げるごとに-0.5%です。最大の60か月繰り上げてしまうと、-30%になってしまいます。

まだ年金を受給していないのであれば、年金収入が211万円以下になるように計算して繰り上げすることができるかもしれません。ただし、計算ミスをしてしまうと、修正が効かないのでご注意ください。