平均貯蓄額が一番多いとされている60代。
現役世代が多かったり、退職金の受け取りや老後への貯蓄がピークなど様々な要因が重なっており、他の世代に対して貯蓄額が多くなるのは当然と言えます。
多いと言われても、一体いくらぐらい貯金しているのか気になるものです。みんながいくら貯めているのか、なかなか聞くことができない話題も「総務省の家計調査報告」で大体知ることができます。
今回は、2018年5月に公表された総務省の家計調査報告から60代の平均貯蓄額(平均値・中央値)について見ていきましょう。
60代平均貯蓄額(平均値・中央値)
総務省の家計調査報告によると、60代の平均貯蓄額は2,382万円(2017年度)とのことです。2016年度が2,312万円、2015年度が2,402万円となっていますので、大きな変化は見受けられません。
この金額を見て、高額すぎて驚く人もいるでしょう。安心してください、平均貯蓄額は一部のお金持ちが指標を押し上げているので、現実とはやや異なるのです。このような指標は、中央値を知ることで貯蓄額の現実を見ることができます。
改めて総務省の家計調査報告を見てみると、60代の平均貯蓄額は2,382万円とありますが、その中央値は1,016万円とあります。平均値と比べると半分以下になってしまっています。これが現実と考えたほうが良さそうです。
貯蓄2,000万円あると老後は安泰?
先ほど、出てきた60代の平均貯蓄額2,382万円。この金額があるとしたら、老後は安泰なのでしょうか?
総務省の家計調査年報(家計収支編)と照らし合わせて見ていきましょう。
60歳で退職、その後収入を得ない場合に必要とされる老後の生活費
日本人の定年後の平均余命からすると、男性23.36年、女性28.68年です。平均的に定年後に25年程度生きるということになります。
厚生労働省の年金のモデルケースでよく使用される、夫婦二人での生活費は月27.6万円です。ここから試算する、25年間で必要になる金額は8,280万円となります。現実味のない高額になってしまいました。
27.6万円(平均生活費) × 12カ月 × 25年 = 8,280万円
一方、公的年金として25年間受け取れる金額は6,660万円です。(同じく夫婦2人のモデルケースでの例)
22.2万円(平均年金受給額) × 12カ月 × 25年 = 6,660万円
生活費に対して年金収入は少ない見込みです。この差額は1,220万円となり、この金額が不足するということです。(あくまでもモデルケースでの例)
ただ、貯蓄が平均値の2,382万円があるとしたら、十分間に合う計算になりますが、中央値の1,016万円で見てみると若干足りない計算になってしまいます。やや節約した生活が必要でしょう。
健康であれば、定年後も働くことを選択することで、不足分を補うこともできます。
貯蓄額を増やすためにやっておきたいこと
定年後に貯蓄を増やすことは、何か特別な才能がある場合を除き、基本的に仕事をするしかないと思います。貯蓄を維持するのであれば、生活費を節約することや生活水準を下げるという選択肢もあるでしょう。
投資という選択肢もありますが、リスクは避けられません。初心者には絶対におすすめできるものではありません。
年金の受け取りを遅らせることで、年金の増額(最大で42%増)もできますが、得損はどこまで長生きするかにもよるため、正直何ともいえないでしょう。
年金の繰り下げによる年金増額率早見表
請求時の年齢 | 増額率 |
66歳0カ月から66歳11カ月 | 8.4%~16.1% |
67歳0カ月から67歳11カ月 | 16.8%~24.5% |
68歳0カ月から68歳11カ月 | 25.2%~32.9% |
69歳0カ月から69歳11カ月 | 33.6%~41.3% |
70歳 | 42% |
健康に過ごし、1年でも年金の請求を遅らせることで結構な額が増えることができますので、検討してみるのも価値はあります。